バルバロムの思考迷路

思ったことを書く。いいことも悪いことも。要は掃き溜め

ゲノム編集された人間は人間か

昨今とある隣国で発生したこのニュース

「ゲノム編集ベビー、誕生させた中国の研究者に懲役3年」

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53993990Q9A231C1000000/

 

ゲノム編集で遺伝子を改変した人間の赤ちゃんが誕生し、その研究者に懲役刑が課されるという事件。

ゲノム編集によって、優れた人を作ろうという考え。

国内外で「倫理に反する」との批判が広がっていたが、なんともチート大国らしい

ゲームのチート技術だけでなく、遺伝子のチートまで行うとは・・

 

 

さて、ゲノム編集自体は、食物や植物、動物などですでに行われています。

では人間に利用することはなぜダメなのでしょうか。

 

人間に適用することで、先天的な病気を治せるかもしれません。またいわゆる優れた人間を産めますし、昨今のいじめの原因の1つでもある不細工とかでぶとかでいじめられることもなくなるでしょう。

 

しかし、こうした実験がやがては「人間の改変」や「人間の選別」、さらには「未知の生物の創造」につながるのではないか、という懸念があります。

生まれてくる子どもにとっての安全性は未知数で、思わぬ障害が現れる恐れが十分にあるからです。しかも、受精卵の遺伝子改変は、そこから生まれる子どもだけでなく、その子どもへと世代を超えて伝わって行きます。生まれた子供に問題が発生しなくても、その遺伝子を受け継いだ次世代が障害を持つ可能性があるのです。

遺伝子操作の結果、障害が発生し、ゲームでよく出てくるモンスターやゾンビみたいなのが発生するかもしれません。

 

また、親が望み通りの子どもをもうける「デザイナーベビー」にもつながります。

「デザインベビー」はなぜダメか。一見、望みどおりの子供ができるというのは聞こえがいいですが、生まれてくる子供も意思を持った人間。親は子供の監督権を持ちますが、子は親の所有物ではないのです。デザインベビーはこうした子は親の所有物であることを容認することにつながります。また、能力や美醜によっての差別、逆に遺伝子操作されていることに対しての差別も起こるでしょう。

 

ゲノム編集によって「優れた」人間が社会を作り、戦争のない世界を作れればいいと考える人もいるかもしれません。

これから全世界の全人類が、遺伝子操作によって「優れた」人間を障害が発生することなく

産むならばそうした世界は可能でしょう。

しかし、まず、100%「優れた」人間を作りだすことは難しいでしょうし、

仮に100%が可能であるとしても、全人類が享受できる保証はありません。

操作に高額な代金が要求されることは想像に難くありません。

その場合、貧富の差が如実に差となって現れ、貧富の差が拡大し、差別が拡大するでしょう。

またとある国で作られた場合、その国は、技術を独り占めし、他国より優位に立とうとするでしょう。技術をめぐっての戦争が発生することとなります。

仮に勝利しても操作に失敗しモンスターを作り出し、人類は滅ぼされる。

まるでゲームの世界のディストピアが現実で起こりえないとも限りません。

 

 

さて話をタイトルに移しましょう。

「遺伝子操作で生まれた人間は人間と呼べるのか」

これは個人的にはかなり難しい問いです。

 

ただ、宗教的価値観が広く浸透している欧州諸国では、間違いなく「人間ではない」というでしょう。なぜなら彼らにとって人間は神が創りしものであり、子どもは天からの授け物

子どもの遺伝子に人の手を加えることは神の道義に著しく反するからです。

 

ある種こういった研究を中国の科学者が進めていたのは、こうした一神教的感覚がなく、宗教的価値観を排した共産主義国家の下だから生まれたとも考えられます。

 

 

私は、1人の神制度ではなく、どこにでもいろんな神がいると考える八百万の神的な考え(しかも都合のいい時にしか信仰しない)なので、この問いにはっきりと人間ではないということはできません。

というかそもそも人間の範囲を定めることはとても難しいです。

生物学的なヒトであるならば、遺伝子操作されていようが人間だと考えられます。

しかし、なぜか違和感を覚えてしまいます。それは、おそらく遺伝子操作して都合よく産むという行為が、ゲームの最初に行う主人公のキャラ設定と同じように思ってしまうからでしょうか。この場合生まれた子供は産む大人が操作できるキャラクターであり、人間ではないと考えてしまいます。

 

現在の世界では人間のゲノム編集が禁忌とされていますが、何十年後かすれば、当たり前の世の中になっているかもしれません。その時に生まれた子供を人間と呼べるのか。そして、「人間」に対してどういった考えになっているのか。人権は?自己決定は?多様性は?

いったいどういう世界になっているのか楽しみでもあり、怖くもあります。